シンプルに徹したエコノミーカー

「シンプルな」車というのは、単に今ある車をサイズダウンして、その分
重量を軽くするということを言いたいのではありません。装備、メカニズムを
含めて徹底した簡素化を図り、エコノミーカーとしてのいわば「原点」に立
ち返った車を指しているのです。そういう車の中にこそ、多くの名車が存在し
ていました。
 古くは、自動車というものの普及に決定的な役割を果たしたT型フォードで
す。 その他にも、ドイツのフォルクスワーゲン・ピートル、イタリアのフィア
ット500、イギリスのミニ、そしてフランスのシトロエン2cv、ルノー14など、
シンプルでありながら、きわめて個性的。経済面においても、また文化的にも、
生まれた国及び人類に多大な貢献を果たした傑作車がたくさんありました。
例えば、第2次大戦後長くフランスの国民車と呼ばれ続けたシトロエン2CVは、
当時の社長が、フランス国民の大半を占めていたにも関わらず、それまでモ
ータリゼーションデーションとは無縁であった農民たちに、「4輸に傘をさし
た程度のシンプルで低価格な自動車」を提供しようと企画した商品だったと言
われています。実際、エンジンは非力で、ボディも簡便なバラック作りのよう
なクルマでしたが、燃費は徹底的によくて、乗り心地は下手な高級車より快適
だったようです。このように「農民のための経済的な実用車」というコンセプ
トを初めにしっかり定めて、そのための合理的な設計を徹底して推し進めたの
がシトロエン2CVでした。その風変わりなスタイルは、発表当時、多くの専門
家やジャーナリストたちから噸笑されましたが、ターゲットたる大衆には圧倒
的に支持されて、瞬く聞に「フランスの国民草」と呼ばれるまでになったので
す。30年以上の長寿を保ちながら、最後まで華美になることも栄養過多にな
ることもなく、ただシンプルでエコノミカルであることで、「クラスレスな」
ベーシックカーとしての持持を保ち続けたシトロエン2CV。このモデルが現役
を退いてからすでに10年以上の月日が経っていますが、今再びこのような、
既存の車とは違った発想や手法で作られたエコノミーカーが、求められている
ような気がします。それは、今ある車の「常識」から半ば逸脱することで、大
胆な小型化や軽量化を達成するといったコンセプトかもしれません。このよう
な車が再び、できれば日本から生まれてくれば、自動車市場は面白くなるはずです。